ギターで革命を巻き起こす恐れを知らぬ変革者、マーティン・ルーサー
 
「俺の音楽に耳を傾けると、心の奥底で眠っていた意識が次第に目覚めていくのを感じるだろう。従来のソウルミュージックの枠を越え、不条理な世の中に屈服しない反逆の精神で聴く者の心に革命的な変化を起こす音楽。それがレベルソウルミュージック(魂を改革する音楽)。俺が表現する世界だ」(マーティン・ルーサー)
 2004年10月のデビュー以来、ビルボード誌など米各紙が「ファンクロック界の新指導者、サンフランシスコから彗星のごとく登場!」と騒ぎ立てたてたマーティン・ルーサー。あのキング牧師によく似た名前だが、いったい何者?

「キング牧師のように立派な人間になってほしい」という願いを込め、息子にあの偉大な指導者の名を授けた彼の両親は、厳格なキリスト教信者。将来は教会で活躍してほしいという夢を息子に託し、少年マーティンは聖歌隊の一員として、歌やピアノの練習に励んでいた。そんな少年の思いを一変させたのが、ある日、耳に飛び込んできたファンキー・サウンド。「ファンクやロックなんて悪魔の音楽」と反対する厳格な両親に反抗するかのように、ギターを手にした少年マーティンは、自分自身の世界を求めて旅立っていった。
 
アーティストになるのが自分の使命という信念の下、2000年に自主制作限定アルバム「コーリング」を発表。批評家たちは、「新しい時代の到来を告げるアルバム」と書き立てた。そんななか、そのアルバムに耳を止めたのが「ザ・ルーツ」のクエストラブ。彼の音楽が心の琴線に触れた彼は、「いつか時代がお前に追い付く時は必ずやってくる。それまで一緒にやらないか?」と声をかけ、2003年「ザ・ルーツ」に参加。世界中をツアーする傍ら、ソロ・アルバムのための曲を地道に書きため、2004年10月、満を持して「レベルソウルミュージック」を発売した。メンバーとして残ってほしいというザ・ルーツの要請を断り、LAやNYなどの大都市を中心に全米でのライブを精力的に展開。その評判は著名アーティストらの間でまず火がつき、ジル・スコットやディガブル・プラネッツからデーブ・マシューズ、ジョージ・クリントン&パーラメント・ファンカデリックといった大御所まで、数多くミュージシャンたちと次々と共演。インディーズレーベルのアーティストとして初めて、「デーリー・ブレッド」がVH1やMTV のローテーションに入るなど、インディーズ出身のアーティストとして初の快挙を達成した。「すごい奴がいる」という噂はアメリカを飛び越え、ヨーロッパでもすでに2度もツアーを行うなど、異例の活躍ぶりを続けている。
 
神への祈りを捧げるゴスペル、奴隷たちの嘆きから生まれたブルース、魂の解放を目指したソウルミュージック。そしてストリートで誕生したラップ。人種差別への怒りを革新的な歌詞に投影したパブリック・エネミー、暴力の連鎖を絶ち切れと訴えたKRSワン。こうした流れを踏まえ、我らがスーパーファンク・ロック・プロデューサー、マーティン・ルーサーの登場となる。
 
麻薬や犯罪に手を染める者に向かって、誇りを取り戻して自分の人生を歩め、と励ます「ライズ」、故郷サンフランシスコの荒廃したゲットーを辛辣に描写しながら故郷への愛を歌う「ホーム」、別れてしまった恋人への切ない想いを歌い上げる「ラスト」、そして激しいボーカルスタイルで力強く叫ぶ「レベルソウルミュージック」と「プロディガル・サン」。時には甘く、時には激しく熱く語る彼の姿は、前述したPEやKRSワンとスタイルこそ違うものの、黒人解放運動家の演説を想起させる。厳しい現実の向こうにある夢と希望を歌い上げることに成功したこの作品は、いつしか時代を代表するものになることは間違いない。
 
2006年11月には、アメリカで公開予定の映画「アクロス・ザ・ユニバース」(ソニー・ピクチャーズ配給)にギタリスト役で出演。なんと、あのボノとも俳優として共演しているのだ。演技の経験を全く持たないマーティンだったが、「フリーダ」でアカデミー賞を獲得したジュリー・テイモア監督が彼のキャラクターに惚れ込み、白羽の矢をあてたのだそう。音楽業界だけでなく、映画の世界でも彼が活躍する時代が確実に到来するだろうという伏線は至る所に張り巡らされている。
 
ちなみに、「レベルソウルレコード」は、マーティン自身と大学時代の同級生らが創立したレーベル。ビル・コスビーやスパイク・リーなどを輩出したブラックハーバードと呼ばれる黒人子弟らが通う男子校「モアハウス大学」で、ともに夢を育んだ同志らが築いた。武器の代わりに手にしたギターで革命を巻き起こし続けるマーティン・ルーサー。彼の世界にじっと耳を傾けてほしい。そうすればきっと、まだ見ぬオアシスに辿り着けるから。
 
(解説・対訳:平安名純代)
 
9月15日
マーティンが出演した映画「アクロス・ザ・ユニバース」(http://www.acrosstheuniverse.com/)
全米の劇場で封切りになりました。

12月15日付
マーティンが出演した映画「アクロス・ザ・ユニバース」(http://www.acrosstheuniverse.com/)
がゴールデン・グローブ賞の作品賞部門(ミュージカル・コメディ)にノミネートされました。

2008年2月4日
グッドニュース!
グラミー賞授賞式にマーティンが出ます!
アクロスザユニバースのキャストでビートルズの曲をメドレーします。
現地時間:2月10日の日曜日です。
日本での放映は、翌日2月11日午前9時30分よりWOWWOWであるようです。
お見逃しなく。

*マーティンルーサーのライブ音源が iTunesにアップされてます。
 
MARTIN LUTHER OFFICIAL WEB SITE
http://www.rebelsoulmusic.com/